まず初めに、マイクロ化学チップで実験を行うための全体構成を紹介いたします。
実験を行うためには、最低限以下のパーツが必要とされます。
1, マイクロ化学チップ本体
2, 配管用ホルダー
3, 配管用コネクター
4, キャピラリーチューブ
5, 送液デバイス
また、必要に応じて以下の周辺機器も使用されることもございます。
6, 流量計
7, バルブ
8, 温度コントローラー
9, 観察装置
10, 検出器
本テクニカルノートでは、1, マイクロ化学チップ本体の材質選択方法をご案内いたします。
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マイクロ化学チップは、標準品とカスタム品の2種類を商品としてラインナップしております。材質は、標準品はパイレックス等のホウケイ酸ガラスに限定されますが、カスタム品は、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、PDMS(ポリジメチルシロキサン)より選択することが可能です。以下に、それぞれの特徴を紹介いたします。
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1. ホウケイ酸ガラス
特徴
コーニング社のパイレックスに代表されるように、耐熱性、耐薬品性に優れていることから、マイクロ化学チップの材料として用いられております。カスタムチップの材質としては、最も多く選択いただいております。
光学特性
350nm~2500nm付近までは90%程度の高い透過率を示します。(厚さ2mmの場合)
適用可能な加工方法
ウェットエッチングと機械加工が用いられます。ウェットエッチングは、アスペクト比およそ2:1以上で、深さ1~150μmの場合に多く用いられます。機械加工では、主にウェットエッチングより高いアスペクトを要求される時に用いられます。
加工精度
ウェットエッチング、機械加工共に10%程度の公差が出ます。
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2. 石英ガラス
特徴
光学特性に優れますことから、光学系を用いる実験に適しています。一方、ウェットエッチングの場合の加工範囲はホウケイ酸ガラスよりは狭いことと、チップのコストが高いという面も持ちます。
光学特性
真空紫外線(VUV)領域の175nm付近まで90%程度と、極めて高い透過率を示します。
適用可能な加工方法
ウェットエッチングと機械加工が用いられます。ウェットエッチングは、アスペクト比およそ2:1以上で、深さ1~50μmの場合に多く用いられます。機械加工では、主にウェットエッチングより高いアスペクトを要求される時に用いられます。
加工精度
ウェットエッチング、機械加工共に10%程度の公差が出ます。
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3. PDMS
特徴
簡易型を用いた成形により製造されることから、1枚当たりのコストは低く抑えられます。また、素材には弾力があります。一方、表面は疎水性で耐薬品性、非特異吸着はガラスより劣り、ガス透過性も高いことから実験の際には注意が必要です。
光学特性
ホウケイ酸ガラスに近い光学特性を示します。
適用可能な加工方法
簡易型を用いた成形により製造されます。複数枚製造した場合の1枚当たりのコストはガラスに比べ低く抑えられます。
加工精度
最大20%程度の公差が出ます。